ひとりタイムカプセル(2022年4月)

春は光陰のごとく通り過ぎて.

1. Eutopiaな写真

2022年4月 国際展示場駅

今月のハイライトはEutopiaなシーンを撮影しようと奮闘したことである.

tak-papa.hatenablog.com

結局はこの一枚に全振りなのだが,突き詰めるとなるとヒルトン東京お台場のロイヤルガーデンスイートに宿泊しなくならなくてはいけなくなる.泊まってみたいけど,ちょっとその,お値段が……と流石に尻込んでしまうクオリティ(とお値段)である.ランジュちゃんに辿り着くまでの道のりは,果てしなく遠い.

 

2. 藤色の桜

2018年3月 メキシコシティ

とにかく日本人は桜が好きである.心象風景として春には桜が欠かせないものと刷り込まれているが,幼少期より春のイニシエーションには桜が欠かせないものであると繰り返し伝えられた教育の賜物なのであろうか.実際は卒業式や入学式に満開となるのは相当に幸運な出来事でもある.

いずれにしても,日本人はやはり桜が好きだ.その熱狂ぶりは海外でも同じであり,特に駐在員などいずれ日本文化に戻る人ほど季節の桜を求める傾向にある.例えばワシントンDCのポトマック河畔などは桜まつりが開催されるなど定番スポットである.そして桜がない地域においては,桜の代わりに日本人に愛好されると言われる木がこのハカランダである.

ハカランダというとギターなどの木材として有名だが,それはブラジル原産の別の木.こちらは花が咲いてから葉が伸び始めるという特徴も,また桜を想起させる.よくよく見なくても花の色だけでなく形も,我々がイメージする桜とは程遠いのであるが,ぼんやりとしたイメージの近似は,異国の地より故郷を憧憬するのに十分な美しさである.

 

3. フィルムカメラの魅力

2019年3月 NJのガレージセール

僕くらいの世代にとっては定番アイテムでもあったインスタントカメラの「写ルンです」だが,意外なことに定期的に若者の間でブームが訪れる.曰く,スマホで簡単に撮影できることに比べ,レトロテイストや現像するまで仕上がりが分からないことが却って魅力であると言われるが,それには全力で同意したい.

そもそも,デジタルであっても一眼レフを用いることのメリットは,アマチュアレベルであれば大きくはない.それだけスマホの撮影能力は優れているし,侮ることができない.さながら,自動運転が現実のものとなる中でマニュアルトランスミッションの車を運転するような,愛好的な趣味の一つに過ぎないと,僕自身も自認しているところである.

なにせカメラを使うことはとにかくお金がかかる.レンズの値段については有名なところであるが,それに加えてフィルムカメラときたら,製造が限定的なフィルム自体の値段,そして現像にまで追加的なお金が必要となる.万が一フィルムが露光なんてしようものならもう目も当てられない.世の人よ,スマホを使うのです……

ただ,ソフトフォーカスやくすんだ色合いというのは,人間が記憶する像と重なるように感じる.頭の中に仕舞われた記憶は,当初いくら鮮明であったとしても徐々にもやが立ち込めてしまう.今のところ,もう二度と同じ彩度でその記憶に触れることはできない.そうした記憶の心象風景とフィルム撮影の写真というのは,どこか似たものがあり,だからこそフィルムカメラで育っていない世代に対しても,「エモさ」を沸き上がらせるのかもしれない.

 

4. 贅沢

2021年7月 京都水族館

なぜそんなことを考えたかといえば,まさに今日4月29日,フィルムの品揃えに優れたカメラ店を訪れたからだ.普段,手に入りやすさを重視して,フジフィルムのSUPERIA,あるいはKodakのPORTRAくらいしか使っておらず,多種多様なフィルムによるそれぞれの表現力に度肝を抜かされた.

特にロシア製のフィルムが素晴らしかった.そのソフトフォーカスさと淡い色合いは,訪れたこともない旧共産圏のイメージそのものであったと言っても過言ではない.残念なことに,このご時世そうしたフィルムの流通は大きく減少してしまい,もしかすると二度とは出会うことすらできない可能性だってある.

繰り返しとなるが,現在の世界ではともすれば「重要では無い」技術である.しかし,それを楽しむことができるというのは,物質的精神的に豊かであることの証ではあったのだろう.無駄を愛して楽しむ心を,どうぞ大切に.